品番:1746
女声合唱とピアノのための だましてください言葉やさしく
本体価格\1,500+税かごに入れる
出版社:カワイ出版
A4判 40頁
作曲:信長貴富
グレード:中級
演奏時間:約13分
男性のフィルターを通した願望的女性像ではなく、女という性を生きる詩人から生み出された言葉を、大人の女声によって音像化することを主眼に置いた作品。3篇の詩はどれも個性的であり、その個性を活かすように曲想の異なる音楽が絡み合う。コンパクトでありながらも聴きごたえのある作品。女声三部合唱。ピアノ伴奏付。
1 もう一つのコップ(高橋順子:詩)(2'20")
2 だましてください言葉やさしく(永瀬清子:詩)(5'30")
3 愛人ジユリエツト(新川和江:詩)(5'10")
(まえがき)
女声コーラスしなのの高い技術と豊かな表現力に期待して、大人の女性(この場合「性」の意味で)の多面性を引き出せるような曲を書いてみようというのが、今回の詩選びの出発点でした。男性のフィルターを通した願望的女性像ではなく、女という性を生きる詩人から生み出された言葉を、大人の女声(この場合「声」の意味で)によって音像化することを目標に置き、個性的な3つの詩を選びました。
【もう一つのコップ】
高橋順子は1944年生まれの詩人。どちらかというと叙情とは対極にある筆致によって生活の機微を飾らずに書き留めた詩が多い。「もう一つのコップ」のサスペンシヴな言葉の運びを、変わり身の早い音楽に仕立てた。
【だましてください言葉やさしく】
永瀬清子(1906〜1995)は岡山で農業に従事しながら詩人としての世界を構築した人物。閉ざされた日常の中で綴られた言葉は、だからこそ解放を希求しているかのような宇宙的な広がりを持っている。「だましてください言葉やさしく」は秘めた欲望の吐露であるが、気高さを失っていないのは永瀬の才能の為せる業である。歌のラインの美しさに重点を置いて作曲した。
【愛人ジユリエツト】
詩のサブタイトルには「同じ名の映画によせて」とある。1950年制作のフランス映画「愛人ジュリエット」はシュールな幻想恋愛劇である。詩は新川和江(1929〜)の第一詩集『睡り椅子』(1953年刊)に収められており、この詩人の最初期の作品にあたる。新川自身の最近の解説(『詩が生まれるとき』みすず書房)によれば、詩の前半は映画の或るシーンを想起した点描であり、「後半の詩句はまぎれもなく私の感性から生れた言葉。」とのこと。フィクションとリアリズムとの狭間に介立する熱情。音楽はスリリングなものとなった。
女声コーラスしなのによる初演は期待を超える見事なものでした。初演指揮を執ってくださった伊東恵司先生、ピアノの水戸見弥子さん、初演の事前指導と再演指揮にあたられた佐原玲子先生、各位に心から感謝申し上げます。